実家じまいの第一歩は、親に話を切り出すことではありません。70代の親と話す前に、子ども側がやっておきたい5つの準備、避けるべき言い方、最初に片付けるべき場所、段階的な進め方、買取活用まで、実家じまいの始め方を網羅的に解説します。
実家じまいは「親を説得すること」から始めない
実家じまいを考え始めたとき、多くの人が最初に悩むのが「親にどう切り出すか」です。特に親が70代に入ると、家の管理、荷物の整理、将来の住まい、相続、介護など、現実的に考えるべきことが増えてきます。
しかし、いきなり「実家を片付けよう」「家を売ったほうがいいのでは」と話すと、親が強く反発することがあります。実家は単なる不動産ではなく、親にとっては長年暮らしてきた場所であり、思い出や家族の歴史が詰まった大切な空間だからです。
そのため、実家じまいは親を説得することから始めるのではなく、子ども側が事前に情報を整理し、冷静に話し合える準備をすることが大切です。準備不足のまま話を始めると、感情的な対立になりやすく、かえって話が進まなくなることもあります。
この記事では、70代の親と実家じまいについて話す前に、子ども側がやっておきたい5つの準備について解説します。
準備1:実家じまいの目的をはっきりさせる
最初に考えるべきことは、「なぜ実家じまいを考えるのか」という目的です。目的が曖昧なまま親に話すと、親から見ると「家を処分したがっている」「自分の暮らしを否定されている」と受け取られてしまうことがあります。
実家じまいの目的には、さまざまなものがあります。
たとえば、親が高齢になり家の管理が負担になってきた、空き家になる前に整理しておきたい、相続時に兄弟姉妹で揉めないようにしたい、親が施設や子どもの近くへ住み替える可能性がある、荷物が多く災害時や転倒時のリスクが高まっている、などです。
大切なのは、「家をなくすこと」が目的ではなく、「親がこれから安心して暮らせる状態をつくること」を目的にすることです。
親と話すときも、「家をどうするか」ではなく、「これからの暮らしをどう安全にするか」という視点で話すほうが受け入れられやすくなります。
実家じまいは、売却や解体だけを意味するものではありません。荷物を減らす、危険な場所を整える、将来の空き家リスクを減らす、相続の準備をするなど、段階的に進めることもできます。
まずは子ども側が、実家じまいを何のために始めるのかを整理しておきましょう。
準備2:実家の現状を把握しておく
親と話す前に、実家の現状をできるだけ把握しておくことも重要です。実家じまいの話は、感情だけで進めると難しくなります。現状を具体的に把握しておくことで、必要な対応が見えやすくなります。
確認したいポイントは、家の状態、土地や建物の名義、住宅ローンの有無、固定資産税の金額、家財の量、修繕が必要な場所、空き家になった場合の管理方法などです。
特に注意したいのが、不動産の名義です。親名義だと思っていた家が、実は祖父母名義のままになっていることもあります。この場合、売却や解体を進める前に相続登記が必要になる可能性があります。
また、家の状態も確認しておきましょう。屋根や外壁の劣化、水回りの不具合、雨漏り、シロアリ被害、庭木の管理、隣地との境界などは、将来的に費用やトラブルにつながることがあります。
家財についても、どの部屋にどれくらい荷物があるのかを大まかに把握しておくと、片付けの規模が見えてきます。実家じまいでは、家そのものよりも荷物の整理に時間がかかるケースが少なくありません。
ただし、親の許可なく勝手に書類や荷物を確認するのは避けるべきです。あくまで見える範囲で現状を把握し、必要に応じて親に確認する姿勢が大切です。
準備3:兄弟姉妹や家族の意向を確認する
実家じまいは、親と子ども一人だけの問題ではない場合があります。兄弟姉妹がいる場合は、事前に家族の意向を確認しておくことが大切です。
たとえば、自分は実家を売却したほうがよいと思っていても、兄弟姉妹の中には「できれば残したい」と考える人がいるかもしれません。また、将来的に誰かが住む可能性がある、仏壇やお墓の管理と関係している、親の介護方針と関係している、というケースもあります。
親に話す前に、兄弟姉妹の間で最低限の認識を合わせておくと、話し合いが進めやすくなります。
ただし、子ども側だけで結論を決めてから親に伝えるのは避けたほうがよいです。親からすると、自分の家のことを勝手に決められたように感じてしまいます。
理想は、「親に話す前に子ども側の考えを整理する」段階にとどめることです。
兄弟姉妹で確認しておきたいのは、実家を今後どう考えているか、片付けや費用を誰がどの程度負担できるか、親の住まいについてどう考えているか、相続時に不動産をどう扱う可能性があるか、といった点です。
家族間で意見が分かれそうな場合は、早めに話し合っておくことが大切です。実家じまいは、後回しにすると感情的な問題が大きくなりやすいテーマです。
準備4:費用の目安を調べておく
実家じまいには、さまざまな費用がかかる可能性があります。親と話す前に、どのような費用が発生するのかを大まかに把握しておくと、現実的な話し合いがしやすくなります。
主な費用としては、不用品回収費用、遺品整理や生前整理の費用、ハウスクリーニング費用、修繕費用、解体費用、測量費用、相続登記や司法書士費用、不動産売却時の仲介手数料などがあります。
特に荷物が多い実家の場合、片付け費用は想像以上に高くなることがあります。家具、家電、衣類、布団、食器、本、趣味用品、農機具、物置の中身など、長年の生活で蓄積されたものを整理するには時間も人手も必要です。
また、家を売却する場合でも、必ずしもそのまま売れるとは限りません。古い家の場合、解体して更地にしたほうが売りやすい場合もあれば、解体費用をかけずに古家付き土地として売却するほうがよい場合もあります。
事前に費用感を調べておくことで、「いくらかかるかわからないから不安」という状態を避けることができます。
ただし、最初から細かい見積もりを取る必要はありません。親と話す前の段階では、一般的にどのような費用がかかるのかを知っておくだけでも十分です。
費用の話をするときは、親を不安にさせないように注意しましょう。「お金がかかるから早く処分しよう」ではなく、「将来困らないように、今のうちに選択肢を知っておこう」という伝え方が大切です。
準備5:親の気持ちを想像して話す順番を考える
実家じまいで最も大切なのは、親の気持ちを無視しないことです。子ども側から見ると、実家は「管理が大変な家」「将来の空き家リスク」「相続の問題」に見えるかもしれません。しかし、親にとっては「自分の人生そのもの」と感じられる場所です。
そのため、話す順番を間違えると、親が心を閉ざしてしまうことがあります。
最初から「家を売る」「片付ける」「施設に入る」といった話をするのではなく、まずは親の暮らしの困りごとを聞くことから始めるのがおすすめです。
たとえば、「最近、家の掃除は大変じゃない?」「庭の手入れは負担になっていない?」「2階に上がるのは危なくない?」「何か手伝えることはある?」といった聞き方です。
親自身が困っていることを話してくれれば、そこから自然に片付けや住まいの話につなげることができます。
また、実家じまいという言葉を最初から使わないほうがよい場合もあります。「実家じまい」と聞くと、親は家を奪われるような印象を受けることがあります。
最初は「これからの暮らしを少し楽にするための整理」「危ない場所を減らす片付け」「必要なものをわかりやすくする準備」といった柔らかい表現を使うほうがよいでしょう。
話し合いは一度で終わらせようとしないことも大切です。70代の親にとって、住まいや荷物の整理は大きな決断です。何度かに分けて、少しずつ考えてもらう時間をつくりましょう。
70代の親と話すときに避けたい言い方
実家じまいの話では、内容だけでなく言い方も重要です。悪気がなくても、親を傷つけたり、不安にさせたりする表現があります。
たとえば、「この家、もういらないでしょ」「早く片付けないと大変なことになるよ」「こんなに荷物を残されても困る」「どうせ誰も住まないんだから売ったほうがいい」といった言い方は避けたほうがよいです。
これらの言葉は、子ども側からすれば現実的な意見かもしれません。しかし、親にとっては自分の人生や暮らしを否定されたように感じることがあります。
代わりに、「これからも安心して暮らせるように少し整理しない?」「必要なものがすぐわかるようにしておくと安心だね」「今のうちに少しずつ片付ければ、無理なく進められると思う」「将来困らないように、一緒に考えておきたい」といった言い方がよいでしょう。
実家じまいは、親を急かすものではありません。親の気持ちを尊重しながら、将来の負担を減らすための準備として話すことが大切です。
最初に片付けるべき場所
親が実家じまいに前向きになったとしても、いきなり家全体を片付けようとすると負担が大きくなります。最初は、生活に直結する場所や安全に関わる場所から始めるのがおすすめです。
たとえば、玄関、廊下、階段、寝室、キッチン、浴室、トイレなどです。これらの場所は、転倒や事故につながりやすいため、荷物を減らすだけでも暮らしやすくなります。
特に廊下や階段に物が置かれている場合は、早めに整理したほうが安心です。夜間の移動や災害時の避難にも関わります。
次に、重要書類の整理も進めておきたいポイントです。不動産関係の書類、保険証券、年金関係、預貯金、通帳、印鑑、契約書、医療関係の書類などは、いざというときに必要になります。
ただし、重要書類は親にとって非常にプライベートなものです。勝手に探したり整理したりせず、「必要なときに困らないように、置き場所だけ共有しておこう」と伝えるのがよいでしょう。
思い出の品や写真、手紙、記念品などは、最初に手をつけると話が止まりやすくなります。思い出の品は感情が動きやすいため、片付けに慣れてから一緒に整理するほうが進めやすいです。
実家じまいは段階的に進めるのが現実的
実家じまいというと、家を売る、解体する、すべて片付けるといった大きな決断をイメージしがちです。しかし、実際には段階的に進めるほうが現実的です。
第一段階は、親の暮らしを安全にするための整理です。通路を確保する、使っていない家具を減らす、危険な場所を確認するなど、日常生活の負担を減らすことから始めます。
第二段階は、重要書類や貴重品の整理です。必要な書類がどこにあるか、誰が確認できるかを共有しておくと、将来の手続きがスムーズになります。
第三段階は、家財の整理です。使っていない物、処分してよい物、家族に譲りたい物、売却できそうな物を少しずつ分けていきます。
第四段階は、住まいや不動産の方針を考えることです。親が住み続けるのか、住み替えるのか、将来的に売却するのか、空き家として管理するのかを家族で話し合います。
このように段階を分けることで、親の心理的な負担を減らしながら進めることができます。
実家じまいで買取サービスを活用するメリット
実家じまいでは、すべてを捨てる必要はありません。家具、家電、ブランド品、骨董品、着物、楽器、工具、カメラ、時計、食器、趣味用品など、状態によっては買取対象になるものもあります。
買取サービスを活用することで、処分費用を抑えられる可能性があります。また、親にとっても「捨てる」のではなく「誰かに使ってもらう」と考えられるため、手放す心理的な負担が軽くなることがあります。
特に高齢の親は、物を捨てることに抵抗を感じることが多いです。「まだ使える」「もったいない」と感じる物でも、買取やリユースという形で次の人に渡ると考えると、整理が進みやすくなります。
ただし、買取価格に過度な期待をしすぎないことも大切です。古い家具や大型家電は、状態や年式、搬出条件によって買取が難しい場合もあります。
実家じまいでは、売れる物、譲る物、処分する物を分けて考えることが重要です。最初からすべてを不用品として扱うのではなく、価値がありそうな物は査定を受けてみるとよいでしょう。
まとめ:実家じまいは親と向き合う前の準備が大切
実家じまいは、家や荷物を整理するだけの作業ではありません。親の気持ち、家族の関係、将来の暮らし、相続、不動産、費用などが関わる大きなテーマです。
特に70代の親と話す場合は、いきなり実家をどうするかを切り出すのではなく、まず子ども側が準備をしておくことが大切です。
実家じまいの目的を整理すること、実家の現状を把握すること、兄弟姉妹の意向を確認すること、費用の目安を調べること、親の気持ちを想像して話す順番を考えること。この5つを準備しておくだけで、話し合いはかなり進めやすくなります。
実家じまいは、一度で終わらせるものではありません。親の暮らしを尊重しながら、少しずつ安全で安心できる状態に整えていくことが大切です。
親にとっても、子どもにとっても納得できる形で進めるために、まずは焦らず、準備から始めてみましょう。
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